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CommonNoun’s diary

予習をする。原典にあたる。

A-U の距離化定理から Urysohn の距離化定理を導くこと

数学

 1923 年に距離化のための必要十分条件を与える Alexandroff-Urysohn の距離化定理、そして 1925 年に十分条件を与える Urysohn の距離化定理が世に出ました。言明を見ると、前者から後者はすぐには証明できそうにありません。かくして Urysohn の距離化定理で課されるよりも明らかに弱い基底の条件によって距離化を特徴付けたいという問題が現れました。この問題は Stone の定理「距離化可能空間はパラコンパクトである」に示唆を得て Bing と長田と Smirnov によって独立に解かれるのですが、今回は Alexandroff-Urysohn の定理から Urysohn の定理を証明することを試みます。2 通りの証明を与えます。行間多めです。


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 位相空間はすべて { \displaystyle T_1 } とする.

記号. 集合の部分集合族 { \displaystyle \mathscr{U}, \mathscr{V} } に対し { \displaystyle \mathscr{U} \wedge \mathscr{V} = \{ U \cap V \mid U \in \mathscr{U}, V \in \mathscr{V} \} } とする.これは対称的で結合的である.こうして新たに作られる部分集合族はもとの 2 つの部分集合族の細分になっている.*1

 

定義. 展開列 { \displaystyle ( \mathscr{U} _n )_n } が近傍星型であるとは,その空間の開集合 { \displaystyle U } とその元 { \displaystyle x } について正整数 { \displaystyle n }{ \displaystyle x } の近傍 { \displaystyle N } が存在して { \displaystyle \mathrm{St} (N, \mathscr{U} _n ) \subset U } となることとする.

 

 次の定理は Moore による出版されていない結果であると言われている.逆も成り立つ.

定理. 位相空間は近傍星型展開列をもつとき距離化可能である.

 

証明. { \displaystyle ( \mathscr{U} _n )_n }位相空間 { \displaystyle X } の近傍星型展開列とする.{ \displaystyle \bigcup_{ i=n }^{ \infty } \mathscr{U} _1 \wedge \dots \wedge \mathscr{U} _i } の列は近傍星型展開列で包含関係において広義単調減少である.{ \displaystyle ( \mathscr{U} _n )_n } は最初からこのようなものであるとしてとってよい.

 { \displaystyle \mathscr{U} _1 } の元 { \displaystyle U }{ \displaystyle \bigcap_{ U \in \mathscr{U} _n } \mathscr{U} _n } の元 { \displaystyle U ^{ \prime } }{ \displaystyle U } と交わるならば常に { \displaystyle U \cap U ^{ \prime } } が被覆 { \displaystyle \mathscr{V} } のある元に包含されるとき,{ \displaystyle \mathscr{V} } において「小さい」ということにしよう.

 { \displaystyle \mathscr{V} _1 = \mathscr{U} _1 } と定め,各正整数 { \displaystyle n } について,{ \displaystyle \mathscr{V} _{n+1} }{ \displaystyle \mathscr{V} _n } において小さい { \displaystyle \mathscr{U} _{n+1} } のすべての元からなる部分集合族とする.各 { \displaystyle \mathscr{V} _n }{ \displaystyle X } を被覆するとすると,これが { \displaystyle X } の正則展開列となることは容易にわかる.被覆となることを示そう.

 

 数学的帰納法による.最初の場合は明らかである.{ \displaystyle n } を正整数,{ \displaystyle \mathscr{V} _n }{ \displaystyle X } を被覆するとし,{ \displaystyle x \in X } とする.{ \displaystyle x \in V } なる { \displaystyle V \in \mathscr{V} _n } がある.{ \displaystyle x } の近傍 { \displaystyle N } と整数 { \displaystyle m>n } で,{ \displaystyle i \ge m } のとき常に { \displaystyle \mathrm{St} (N, \mathscr{U} _i ) \subset V } となるようなものが存在する.このとき { \displaystyle \mathrm{St} (x, \mathscr{U} _j ) \subset N } となるような整数 { \displaystyle j \ge m } がとれる.{ \displaystyle x \in U } となる { \displaystyle U \in \mathscr{U} _j } をとると,{ \displaystyle U }{ \displaystyle \mathscr{V} _n } において小さい(確かめよ!).よって { \displaystyle U }{ \displaystyle x } を含む { \displaystyle \mathscr{V} _{n+1} } の元となる.これで帰納法は回り証明は完成する. //

 

Urysohn の定理の証明. { \displaystyle U_1, U_2, \dots } を正則空間 { \displaystyle X } の可算開基とするとき,{ \displaystyle \mathrm{Cl} U_i \subset U_j } なるすべての { \displaystyle i,j } について { \displaystyle V(i,j)= \{ U_j, X \setminus \mathrm{Cl} U_i \} } と定めると,この可算集合を並べてできる列は近傍星型展開列となる. //

 

 このようにして Alexandroff-Urysohn の定理から Urysohn の定理を示すことができた*2.次は Alexandroff-Urysohn の定理の記事で最後に述べた形を使うものである.正則第二可算ならば展開空間であることは上の証明のようにすればわかるので,全体正規であることを示せばよい.

 

定義. 集合 { \displaystyle X } の部分集合族が星有限であるとは,その各々の元について,それと交わるような族の元が有限個しかないこととする.位相空間の星有限開被覆は局所有限である.
 空間 { \displaystyle X } の被覆 { \displaystyle \mathscr{U} } に対して { \displaystyle \mathscr{V} ^{ \Delta } < \mathscr{U} } となるような被覆 { \displaystyle \mathscr{V} }{ \displaystyle \mathscr{U} }{ \displaystyle \Delta } 細分という.{ \displaystyle * } 細分も同様である.

 

補題. { \displaystyle \mathscr{U}= \{ U_{ \alpha } \mid \alpha \in A \} } を空間 { \displaystyle X } の星有限開被覆{ \displaystyle \mathscr{F}= \{ F_{ \alpha } \mid \alpha \in A \} } を各 { \displaystyle \alpha \in A } について { \displaystyle F_{ \alpha } \subset U_{ \alpha } } なる閉被覆とする.二元被覆 { \displaystyle \{ U_{ \alpha } , X \setminus F_{ \alpha } \} } すべてのウェッジを { \displaystyle \mathscr{U} ^{ \prime } } と表わすとこれは { \displaystyle \mathscr{U} } の開 { \displaystyle \Delta } 細分である(実は星有限にもなっている;というか本当はそっちがメイン).

 

証明. 空でない { \displaystyle U^{ \prime } \in \mathscr{U} ^{ \prime } }{ \displaystyle \Gamma \subset A } により { \displaystyle \bigcap_{ \alpha \in \Gamma } U_{ \alpha } \cap \bigcap_{ \alpha \notin \Gamma } ( X \setminus F_{ \alpha } ) } の形に書ける.{ \displaystyle \Gamma } は空でない有限集合である.これが開であることを示そう.

 { \displaystyle B=\{ \beta \in A \mid U_{ \beta } \cap \bigcap_{ \alpha \in \Gamma } U_{ \alpha } \neq \varnothing \} } とするとこれも有限集合である.そして { \displaystyle \beta \notin B } に対して { \displaystyle \bigcap_{ \alpha \in \Gamma } U_{ \alpha } \subset X \setminus F_{ \beta } } となる.ゆえに { \displaystyle U^{ \prime } = \bigcap_{ \alpha \in \Gamma } U_{ \alpha } \cap \bigcap_{ \beta \in B \setminus \Gamma } X \setminus F_{ \beta } } でこれは開である.

 

 { \displaystyle x \in X } とし,{ \displaystyle F_{ \alpha } } がこれを元として含むとする.{ \displaystyle x } を含む { \displaystyle \mathscr{U} ^{ \prime } } の元が { \displaystyle X \setminus F_{ \alpha } } に含まれることはないのでそれらはすべて { \displaystyle U_{ \alpha } } に含まれる.つまり { \displaystyle \mathscr{U} ^{ \prime } }{ \displaystyle \mathscr{U} }{ \displaystyle \Delta } 細分である. //

 

定理. 正則 Lindelöf 空間は全体正規である*3

 

証明. 任意の被覆に対して正則性から閉包の族がそれを細分する開被覆が,Lindelöf 性からその可算部分被覆が存在する.その各々の元についてそれを含むもとの被覆の元を 1 つずつとることで,可算開被覆 { \displaystyle \mathscr{U} =\{ U_1, U_2, \dots \} } と可算閉被覆 { \displaystyle \mathscr{F} =\{ F_1, F_2, \dots \} }{ \displaystyle F_i \subset U_i } なるものがとれる.

 

 { \displaystyle i=1,2, \dots ; n=i,i+1, \dots } に対して開集合 { \displaystyle U_{in} }{ \displaystyle F_i \subset U_{in} \subset U_i, \bar{U}_{in} \subset U_{ i(n+1) } } となるようにとる.これは正規性より可能である.{ \displaystyle X_n =\bigcup_{i=1}^n U_{in} } とおく.これは { \displaystyle X } を被覆し,それぞれの閉包は次の番号のものに含まれる.

 正整数 { \displaystyle n } に対して { \displaystyle V_n=X_n \setminus \bar{X}_{n-2}, K_n= \bar{X}_n \setminus X_{n-1} } とおく.{ \displaystyle K_n }{ \displaystyle X } の閉被覆をなし { \displaystyle K_n= \bigcup_{i=1}^n K_n \cap \bar{U}_{in} } なので { \displaystyle \{ K_n \cap \bar{U}_{in} \mid i=1,2, \dots ,n ; n=1,2, \dots \} }{ \displaystyle X } の閉被覆をなす.従って { \displaystyle \{ V_{n+1} \cap U_{i(n+1) } \mid i=1,2, \dots ,n ; n=1,2, \dots \} }開被覆で,しかも容易くわかるように星有限である.

 補題より { \displaystyle n=1,2, \dots }{ \displaystyle i=1,2, \dots ,n } にわたって二元被覆 { \displaystyle \{ V_{n+1} \cap U_{i(n+1) }, X \setminus (K_n \cap \bar{U}_{in} ) \} } すべてのウェッジをとるとこれが求める開 { \displaystyle \Delta } 細分となる. //

 

 これで示されるべきことはすべて示された.

*1:A-U の定理の紹介記事で最後に述べた定理はこれを使えば簡単に証明できる

*2:実は Nagata-Smirnov の定理の十分性も証明することができる

*3:正規であることは既にわかっている