単調収束定理の証明
単調収束定理の証明はすべての測度論の教科書に載っています。しかし場合分けを繰り返したり離れた場所に書いた補題をいくつも援用したりしない、わかりやすく参照しやすい証明となると実は日本語の教科書にはあまり見られません。そこで記事を書くことにしました。概ね Rudin "Real and Complex Analysis" の一部の訳です。
定義. 集合 の部分集合の集まり は次の性質を持つとき の 代数であるという.またその元を可測集合という.
(i)
(ii) ならば
(iii) で各 について ならば である.
を の可算個の非交叉な元の集まりとすると となるような, 代数 上定義された に値を持つ常に無限大ではない関数 のことを測度という. 代数と測度が定義された集合を測度空間という.
測度空間 上の無限大を許さない非負実数値関数で,値域が有限集合であるものを(非負)単関数という. を単関数 の相異なる値とするとき, とおくと, となる.ただし は 上で ,その外で の値をとる定義関数である.
が可測(すなわち,すべての開集合の逆像が可測)な単関数で, を の相異なる値として という形をしており, のとき, と定める.ただし と の積は とする.
が可測で のとき と定める.ただし上限は なるすべての可測単関数にわたってとる.
補題. を 上の可測単関数とする. に対して と定めると, は測度である.
証明は省く.次が単調収束定理である., で とすると で となることに注意せよ.
定理. を 上の可測関数列とし
(a) すべての に対して
(b) すべての に対して で とする. が可測ならば*1 で である.
証明. であるから,積分の列には無限大を許せば極限が存在する.それを とおくとまず から がわかる.
を なる可測単関数, を なる定数とし, とおく.各 は可測で , となる*2.
である. とすると補題と注意から となる.これがすべての に対して成り立つので なるすべての可測単関数 に対して すなわち を得る. //