不連続線型関数の話
なんか昨日この話題でブログが書かれていたので触発されて書くものです。今回はあまり定理を証明したりとかしません。
不連続線型関数というのはここでは、和を保つ実変数実数値関数であって連続でないもののことを指します。Cauchy の関数方程式 を満たす関数 は、いくつかの条件のもとで比例関数に、よって連続関数になります。例えば:
(1) Lebesgue 可測*1
(2) だけ証明しておきましょう。綺麗な証明を持つ次の定理の容易な系です。
定理. 不連続線型関数のグラフは Euclid 平面において稠密である.
証明. 不連続線型関数のグラフは 部分線型空間に含まれることはない.なぜならそれは比例関数であることを意味するからである.ゆえに 線型独立な 2 つの元を含む.それらで張られる 線型空間はグラフの部分集合であり Euclid 平面において稠密である. //
さて、不連続線型関数は Hamel 基底を使ってわりと簡単に構成できることが知られています。そうして構成される例のグラフは通常 軸の部分集合と無理点(両座標が無理数の点)からなるかと思います。これは直線 より上という開かつ閉部分集合を持つので連結ではありません*2。
そりゃ不連続関数のグラフなんだから連結ではないだろ、と思うかもしれませんが、実は不連続線型関数であってグラフが連結なものが存在します*3。1942 年に Jones によって構成されました。Jones は以前の記事で出てきた Jones machine の Jones と同一人物です。
その関数は整列可能定理と超限的構成によって巧みに作られ、グラフが連結な不連続線型関数はいくつもの奇妙な性質を持ち、連結性と平面の位相についてのいくつもの問に反例を与えることが示されました。そのような関数のグラフを として、例えば:
・ の補集合は連結である
・ と上半平面の共通部分は完全不連結だが 1 点の付加により連結となる
・ は 2 点以上を持つ有界連結部分集合を含まない
・縦に平行移動したものの合併 は連結局所連結で、その補集合も連結局所連結である
気持ち悪い集合ですね。まあ詳しくは下に示す原論文を読んでください。原論文の他にこの話題について証明つきで述べた文献は寡聞にして存じ上げません。
この記事は次の文献を参考にしました:
"Handbook of the history of general topology" 中の M. Rudin による記事 "The early work of F. B. Jones"
・3 分冊からなるこの本はマニアックなネタがけっこう載っていて面白い。フルに楽しむためにはかなりの知識量がいる気がする
Jones "Connected and disconnected plane sets and the functional equation " Bull. Amer. Math. Soc. 48(1942), 115-120
・読みづらい。もともとこの論文の行間を埋めて「Cauchy の関数方程式についてあなたが読むべき 2 番目の記事」みたいな題を付けようかと思っていたのだが帰省中で文献が手に入りづらいので今回は諦めた。誰か代わりにやってくれてもいいんですよ