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CommonNoun’s diary

予習をする。原典にあたる。

パラコンパクト多様体の距離化可能性への旅

数学

 パラコンパクト Hausdorff な局所 Euclid 位相空間(位相多様体)が距離化可能であることを、いくつかの距離化定理を経由して示します。10 日くらい前の記事で証明した Moore の距離化定理を出発点とします。

commonnoun.hatenadiary.jp


 空間はすべて { \displaystyle T_1 } とする.

 

 次は Moore の距離化定理の直接の系である.森田の定理と呼ばれることがある.またこの定理から Moore の定理を導くことも容易であることからか,この定理を Moore の定理と言うこともある.

定理 1. 各点 { \displaystyle x \in X }{ \displaystyle \mathrm{St}( \mathrm{St}(x, \mathscr{U} _n ) , \mathscr{U} _n ) } が基本近傍系をなすような開被覆の列 { ( \displaystyle \mathscr{U} _n)_n } が存在するとき { \displaystyle X } は距離化可能である. //

 この定理から次の定理が導かれる.

定理 2(Jones). { \displaystyle X }開被覆の列 { \displaystyle ( \mathscr{U} _n)_n } であって,少なくとも一方はコンパクトな 2 つの閉集合 { \displaystyle H,K \subset X } に対してある { \displaystyle n } が存在して { \displaystyle \mathrm{St}(H, \mathscr{U} _n ) \cap K = \varnothing } となるようなものが存在するとき,{ \displaystyle X } は距離化可能である.

証明. 先の記事でしたように,開被覆の列は包含について減少列であるとしてよい.

 { \displaystyle x } を開集合 { \displaystyle G } の点とする.各正整数 { \displaystyle n } について { \displaystyle p \in U_n}, { \displaystyle U_n \cap V_n \neq \varnothing }, { \displaystyle (U_n \cup V_n) \cap (X \setminus G) \neq \varnothing } なる { \displaystyle U_n, V_n \in \mathscr{U} _n } が存在すると仮定する.{ \displaystyle x_n }{ \displaystyle U_n \cap V_n } の点とする.

 { \displaystyle (x_n)_n }{ \displaystyle x } に収束する.{ \displaystyle H=G \cap \{ x, x_1, x_2, \dots \} , K=X-U } とする.この 2 つは閉集合{ \displaystyle H } はコンパクトである.各 { \displaystyle n } について { \displaystyle U_n }{ \displaystyle V_n } のどちらかがこの両方と交わる { \displaystyle \mathscr{U} _n } の元となり,仮定に矛盾する.ゆえに開被覆の列は上の定理の条件を満たす. //

 

定義. 位相空間 { \displaystyle X \times X } 上の非負値対称関数 { \displaystyle d } であって,次の条件を満たすものは対称距離と言われる.
{ \displaystyle d(x,y)=0 \Leftrightarrow x=y}  
{ \displaystyle A \subset X } が閉であることとすべての { \displaystyle x \in X \setminus A } に対して { \displaystyle d(x,A) > 0} が成立することは同値である.ただし点と集合間,また集合間の「距離」は距離のときと同様下限によってはかられる. 

 

 次の定理は Arhangel'skii によるようである.対称距離が実際に距離であることを保証するものではない.
定理 3. 少なくとも一方がコンパクトな 2 つの閉集合が正の「距離」をもつような Hausdorff 対称距離空間は距離化可能である.

証明.{ \displaystyle x } はその { \displaystyle \epsilon (>0)} 近傍の内点である.背理法によりこれを示す.{ \displaystyle \epsilon } 近傍の補集合を { \displaystyle M } とし { \displaystyle x \in \mathrm{Cl}M} とする.{ \displaystyle M } から距離 0 の点の集合を { \displaystyle L } とする.これが閉集合ならば { \displaystyle x \in \mathrm{Cl}M \subset L} かつ { \displaystyle d(x,M) \ge \epsilon >0} でめでたく矛盾となる.

 閉でないとすると上の定義より { \displaystyle d(y,L)=0 } なる { \displaystyle y \in X \setminus L } がある.{ \displaystyle L } における点列 { \displaystyle (x_n)_n } を,各 { \displaystyle n } について { \displaystyle d(x_n,y)<\frac{1}{n} } となるようにとる.{ \displaystyle L } の定義より各 { \displaystyle n } について { \displaystyle d(x_n,x_n^{ \prime }) <\frac{1}{n} } となるような { \displaystyle M } の点 { \displaystyle x_n^{ \prime } } が存在する.

 { \displaystyle S= \{ x, x_1, x_2, \dots \} } はコンパクトで仮定よりそれと交わらず距離 0 をもつ { \displaystyle T= \{ x_1^{ \prime }, x_2^{ \prime }, \dots \} } は閉でない.よって { \displaystyle d(y^{ \prime },T)=0 } なる { \displaystyle y^{ \prime } \in X \setminus T } がある.{ \displaystyle y^{ \prime }=y } とすると { \displaystyle d(y,M)=0 } だが { \displaystyle y \notin L } となり矛盾が導ける.

 等しくないとすると { \displaystyle (x_n^{ \prime })_n }{ \displaystyle y^{ \prime } } に収束する部分列 { \displaystyle (x_{n_k}^{ \prime })_k } がとれる.この列の点とその極限を併せた集合は閉で { \displaystyle S } と交わらないが距離は 0 となり,矛盾を生じる. 

 すべての { \displaystyle \frac{1}{n} } 球の内部を集めたものを { \displaystyle \mathscr{U} _n } とすればこれは上の定理の条件を満たす. //

 

 条件を「2 つのコンパクト集合が正の『距離』をもつ」に弱めた場合,任意の { \displaystyle \epsilon } 球が内点をもたないような反例が作れるそうである.

 

 一点の逆像がコンパクトな閉連続写像を完全写像という.コンパクト空間の上の連続関数っぽい性質を 2 つ抜き出したものである.完全写像は固有写像である.すなわち
補題. 完全写像 { \displaystyle f \colon X \to Y } とコンパクト部分集合 { \displaystyle K \subset Y } について { \displaystyle f^{-1}(K) } はコンパクトである.

証明. { \displaystyle \{ U_{ \lambda } \mid \lambda \in \Lambda \} }{ \displaystyle f^{-1}(K) }開被覆とする.{ \displaystyle k \in K } に対してコンパクト集合 { \displaystyle f^{-1}(k) } を被覆する有限部分集合を { \displaystyle \{ U_{ \lambda } \mid \lambda \in \gamma _k \} } とする.

 { \displaystyle V_k=Y \setminus f( X \setminus \bigcup_{ \lambda \in \gamma _k } U_{ \lambda } ) }{ \displaystyle k } を含む開集合である*1.被覆 { \displaystyle \{ V_k \mid k \in K \} } の有限部分被覆を { \displaystyle \{ V_{k_i} \mid i=1, \dots ,n \} } とする.{ \displaystyle \Gamma = \bigcup_{i=1}^n \gamma _{k_i} } とおくと { \displaystyle \{ U_{ \lambda } \mid \lambda \in \Gamma \} } は要求された有限部分被覆である. //

 

 証明はつけないが定理 3 のような対称距離は完全写像で保たれることが上の補題から示される.

命題. { \displaystyle (X,d) } を定理 3 の条件を満たす対称距離空間{ \displaystyle f \colon X \to Y } を完全写像{ \displaystyle x,y \in Y } について { \displaystyle \rho (x,y)=d(f^{-1}(x),f^{-1}(y)) } とおくと { \displaystyle \rho } は定理 3 の条件を満たす対称距離空間となる. //

 閉連続写像について次の事実が知られている.
命題. { \displaystyle f \colon X \to Y } を正規空間から第一可算空間への閉連続写像とするとすべての { \displaystyle y \in Y } について { \displaystyle \mathrm{bdry} f^{-1}(y) } の可算無限部分集合は集積点をもつ.

証明. { \displaystyle y \in Y } とし { \displaystyle \{ V_i \mid i \in \mathbb{Z}_+ \} } をその点での可算基本近傍系とする.{ \displaystyle C= \{ x_i \mid i \in \mathbb{Z}_+ \} } を集積点をもたないような { \displaystyle \mathrm{bdry} f^{-1}(y) } の可算無限部分集合とする.

 これは { \displaystyle X }閉集合なのでその上の関数 { \displaystyle f(x_i)=i (i \in \mathbb{Z}_+) } は Tietze の拡張定理より { \displaystyle X } 全体に拡張される.それを { \displaystyle F } とする.{ \displaystyle G_i=F^{-1} ( (i- \frac{1}{3} , i+ \frac{1}{3} ) ) } とするとこれは疎な開集合族で { \displaystyle x_i \in G_i } である.

 { \displaystyle i } を正整数とする.{ \displaystyle G_i \cap f^{-1}(V_i) \setminus  f^{-1}(y) } は空でないのでその点 { \displaystyle x^{ \prime }_i } をとる.こうして作られる集合 { \displaystyle \{ x^{ \prime }_i \mid i \in \mathbb{Z}_+ \} } は閉である.その像の補集合 { \displaystyle H } は開集合で { \displaystyle x^{ \prime }_i \notin f^{-1}(y) } であるから { \displaystyle y \in H } となる.従って { \displaystyle V_i \subset H } となる { \displaystyle i } があるがこの { \displaystyle i } について { \displaystyle f(x^{ \prime }_i) \notin V_i }{ \displaystyle x^{ \prime }_i } の定め方に反する. //

 

 距離空間の閉連続像の距離化可能性について述べるのが次の定理である.

定理 4(Morita-Hanai-Stone). 距離空間から位相空間の上への閉連続写像 { \displaystyle f \colon X \to Y } について次は同値である.
i){ \displaystyle Y } は距離化可能である.
ii){ \displaystyle Y } は第一可算である.
iii)すべての { \displaystyle y \in Y} について { \displaystyle \mathrm{bdry}f^{-1}(y) } はコンパクトである.

証明. iii) { \displaystyle \Rightarrow } i) のみ示せばよい.{ \displaystyle Y }距離空間の完全像として書けることを示す.各 { \displaystyle y \in Y } について,{ \displaystyle \mathrm{bdry} f^{-1}(y) \neq \varnothing } のとき { \displaystyle L(y)=\mathrm{Int} f^{-1}(y) },そうでないとき { \displaystyle p_y }{ \displaystyle f^{-1}(y) } の任意の点として { \displaystyle L(y)=f^{-1}(y) \setminus \{ p_y \} } とする.{ \displaystyle X_0=X \setminus \bigcup_{y \in Y} L(y) } としこれから { \displaystyle X } への包含写像{ \displaystyle \phi } とおくと{ \displaystyle f \circ \phi }距離空間 { \displaystyle X_0 } から { \displaystyle Y } の上への完全写像となる.ゆえに { \displaystyle Y} は距離化可能となる. //

 

 次の定理は破片が距離化可能な空間の距離化可能性について論じたものである.長田により長田-Smirnov の定理を用いて証明された.

定理 5. { \displaystyle \{ X_{ \lambda } \mid \lambda \in \Lambda \} }{ \displaystyle X } の局所有限閉被覆で各々の { \displaystyle X_{ \lambda } } が距離化可能なものとする.このとき { \displaystyle X } は距離化可能である.

証明. { \displaystyle \sqcup_{ \lambda \in \Lambda } X_{ \lambda } } は距離化可能である.これから { \displaystyle X } への明らかな写像は完全写像である. //

 

 パラコンパクト空間の開被覆が局所有限な閉細分をもつことを考えると次の定理はこの系である.この定理は Smirnov によると言われている.

定理 6. 局所距離化可能なパラコンパクト空間は距離化可能である. //

 ゆえに特に次が成り立つ.

定理 7. 局所 Euclid なパラコンパクト空間は距離化可能である*2. //

*1:このような補集合の像の補集合を小像ということがある.

*2:Hausdorff 性は { \displaystyle T_1 } から出る