パラコンパクト性と Bing-Nagata-Smirnov の距離化定理
局所有限開基をもつ正則空間が距離化可能であることの証明をひとつ思いついたので、パラコンパクト Hausdorff 空間の特徴付けとともに書きます。長田によるオリジナルの証明を簡単にしたような感じ、であり新規性は特になかろうと思います。先日述べた Urysohn の距離化定理の証明のうち,同じやり方でこの定理を示せると言わなかった方を推し進めたものであることが見て取れるでしょう。言った方のやり方を真似てみただけですが。
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位相空間は とする.
局所有限(resp. 疎)とは,局所有限(resp. 疎)な集合族の可算和として書けることである.位相空間の部分集合族が局所有限(resp. 疎)であるとは空間の各点について,交わる族の元が高々有限(resp. 1 つ)であるようなその点の近傍が存在することである.簡単な補題を用意しよう.
補題. 位相空間の可算開被覆 は となるような局所有限細分 をもつ.
証明. とすれば,, とおくだけでよい. //
定理. 位相空間 について以下の条件はすべて同値である.
(0) はパラコンパクト Hausdorff である
(1) の各開被覆は局所有限閉細分をもつ
(2) の各開被覆は開 細分をもつ(全体正規)
(3) の各開被覆は開 細分をもつ
(4) は正則でその各開被覆は 疎な開細分をもつ(正則強 screenable)
(5) は正則でその各開被覆は 局所有限な開細分をもつ
(6) は正則でその各開被覆は局所有限細分をもつ
証明. (1) (2) を の被覆とする. をその局所有限閉細分とする. について とおくと,局所有限閉集合族の(したがって,その部分族の)合併は閉なので, は閉で となる.このような細分は 1:1 細分と呼ばれる.局所有限な細分があるときこのようにすれば局所有限な 1:1 細分がとれる.
と定める.これは の開近傍なので,そのすべての集まり は開被覆をなす.これが の 細分であることを示そう. とする. となるような がある. とすると (さもなくば となる)で, の定め方より となる.よって である.
(2) (3) 細分の 細分が 細分であることによる.
(3) (4)*1 正則性は,点とその開近傍をとったとき,開近傍と点以外という開集合からなる二元開被覆の 細分に関する開近傍の補集合の星の補集合は,点の閉近傍で与えられた開近傍に含まれるということによる.
を の開被覆として, 疎な開細分を構成する.整列集合 により とする. の 細分 , の 細分 , という被覆の列をつくる. について とすると,
各 について を得る.
これを示そう. が, となるような何らかの と交わるとする. であるから,
となり, で,示された.
に対して, とする. である.各 が において疎であることを示す.
とする. なる が存在する. とすると, より である.従って,すべての に対して となる.ゆえに は の元のうち高々 1 つとしか交わらない.
あとは が の被覆であることを証明すればよい. とする. なる がある.何らかの について であるから, が従う.かくして が定義できる.
なる がある.開被覆に関する星は閉包を包含するという一般的な事実と から がわかり, の定め方から は最右辺に属さないので で,示すべきことはこれですべてである.
(4) (5) 自明である.
(5) (6) を の開被覆とする. をその開細分で各 は局所有限とする. を のすべての元の合併とする.補題よりすべての について となるような の局所有限細分 が存在する.今 は の局所有限細分である.
(6) (1) 正則であることによる.
(1) (0) を の開被覆とする. を の局所有限細分, を, の有限個の元としか交わらないような開集合からなる の被覆とする. を の局所有限閉細分とする.
各 に対して とすると は を含む開集合で, は と交わるときに限り と交わる.各 に対し を となるように選ぶ. は,局所有限被覆である の各元がその有限個としか交わらない,よって局所有限な開細分である.
(0) (6) パラコンパクト Hausdorff 空間の正則性はコンパクト Hausdorff の場合と同様にしてわかる. //
定理.(Tukey;Stone) 距離化可能空間 X は全体正規,ゆえにパラコンパクトである.
証明. を の距離, を開被覆とする.各点 について, 開球が の何らかの元に含まれるような なる数をとる. を を中心とする 開球すべての集まりとする.これが の 細分となっていることを示す.
を含む の元の中心の集合を とし とおく. を なるように選ぶ.
とすると .ゆえに は の何らかの元に含まれる. //
定理.(Bing;Nagata-Smirnov) 位相空間 について次の条件は同値である.
(0) は距離化可能である
(1) は正則で 疎な開基をもつ
(2) は正則で 局所有限な開基をもつ
証明. (0) (1) 各 について 開球すべての集まりを考え,それぞれの被覆の 疎な細分をとる.これは先の定理の (4) により可能である.それらすべての合併は 疎な開基をなす.
(1) (2) 自明である.
(2) (0) 第二可算空間が Lindelöf であるのと同じ理由で の任意の開被覆は 局所有限な開細分をもつ.そして正則であるから は全体正規である. が展開空間であることを示す.
を,各 が局所有限であるような の開基とする.各 について を の相異なる元 によって の形をもつ集合すべてからなるものとする. は開集合の(非空とは限らない)集まりとなる.
の有限個とのみ交わる開集合は のうち有限個としか交わらない.ゆえにこれは局所有限である.次に, を を含む開集合とする. を元にもち に含まれる の元が存在するような がある. を元として含む の元の個数を とすると には が属する元がただひとつあり,それは に含まれる. を整列して とする.*2
とし の第一成分として現れうるものすべての集合を ,第二成分として現れるものすべての集合を とおく. とすると (を整列したもの)は展開列をなす.
実際, が開集合 に属するとする. を選び, に を含む集合がただ一つ属しそれが に含まれるようにできる.正則性より閉包がその集合に含まれる の開近傍 が存在する. を選び, に を含む集合がただ一つ属しそれが に含まれるようにできる.いま には を含む集合がただ一つ属し,それは に含まれる. //