CommonNoun’s diary

予習をする。原典にあたる。

ある古典語を一年間学んだこと

 この 2 学期間サンスクリットとかいう死んだ外国語を勉強していました。そのことについて書きます。サンスクリット、難しいと思っていたし実際難しかったけど授業の難易度でいえば古典ギリシアほどではないという印象でした。あと皆さんの中には、デーヴァナーガリーが書けるようになりたいからサンスクリットをやろうと思うという方もいらっしゃるかもしれませんが、日本ではローマナイズで学ぶのが一般的なようなので、そのような人はヒンディーをやった方がいいと思います。

 

 

 あれは 1 回目の 2 年生夏のときですから、もう 2 年も前になるのでしょうか、精神状態がドン底にあった頃ですが、ラテン語ヒンディー語をやっていく中で救いを得たことがありました。今ではどちらもほとんど忘れてしまいましたが。

 

 それでヒンディーの先生からサンスクリットやるといいよ〜ということをたびたび言われていた(一緒に授業を受けていた人が一人いたが、彼は三大印欧古典語はすべて読めると言っていた)のでずっと学びたいと思っていたのです。昨年度は必修科目と被ってとれなかったので今年度やることになりました。

 

 あとせっかくなので古典ギリシア語もいっしょに履修することにしました。古典ギリシア語については別に記事を立てます。

 

 夏学期、Gonda の文法書に沿って、まずは音論です。発音はヒンディーと変わらないので楽勝ですがサンスクリットにはややこしい連声(サンディ)の規則があります。日本語でいう「因縁」を「いんえん」でなく「いんねん」と読むみたいなやつです。サンスクリットは語尾の変化で色々を表わすのですが、その語尾が次の単語の頭の音の影響を受けて変化するので、サンディが分からないと読めないんですね。

 

 とはいえ知らん言語の規則をたくさん並べられても覚えられるわけがないので重要なもの(有声音の前の -as は -o になる、など;-as という語尾は最頻出である a 語幹男性名詞の単数主格形なのでこれは大事)だけ覚えて先に進みます。

 

 次は名詞の曲用です。曲用、いわゆる性・数・格の変化ですね。古い印欧語の特徴をもつ言語で名詞は、性と呼ばれるいくつかのクラスの一つに属し、一つあるのかより多くあるのか、文中でどのような働きをするのかを表わすために尻尾の方を変化させます。形容詞の場合はそれが係る名詞の性・数・格に従って変化するため数と格だけでなくさらに各性に対応した形をもちます。

 

 三大印欧古典語に数えられるサンスクリットもその例に漏れず、サンスクリットにおいて名詞と形容詞は印欧語の中ではとりわけ多い 8 格の変化形を持ちます。また性は男性女性に中性を加えた 3 つがあり、数は単数と複数だけでなく 2 つあることを表わす両数があります。多いですね。いくつかは同じ形になりますが、形容詞の場合 72 の変化をするわけです。ホント多いですね。

 

 そして語尾のセットを一つ覚えればオーケーとかだと良かったのですが、そうは問屋が卸しません。語幹(語尾をつける前のやつ)が母音で終わる母音幹名詞は母音によって少しづつ異なった変化をするので面倒ですし、また子音幹名詞は決まった語尾をつければいいということになってはいるものの語幹と語尾の間でサンディが起こるしものによっては語幹を複数もっているので母音幹ほどではないがまあ面倒です。

 

 先生がご病気を召されて途中 3 回くらい休講になるということがあったので駆け足になりましたが教科書の名詞の部分までは終わったことになりました。

 

 夏学期の印象は、同じく名詞を中心にやっていて毎回訳読の練習問題がある古典ギリシア語と比べて、思ったより似ていないなというのと、古典ギリシア語の方が少しきついなという感じでした。

 

 そして冬学期ですが、必修の線型代数の講義と被ったので線型代数を自習するハメになりました。

 

 冬は動詞編です。教科書の練習問題はなんか動詞の現在組織(直説法現在・過去・願望法・命令法の能動態・反射態) 72 個の活用語尾を覚えないと解けないということになっているので覚え終えるまで他の本の問題を解いたりしながらやっていきました。その 72 の語尾にだいぶ時間をかけていて、大丈夫なのかな〜と思ったものですがどうやら現在組織以外の完了とかアオリストとかはあまり出てこないらしくサラッと流されました。

 

 この辺の何が重要で何が重要でないかという判断は独学だとできないのでありがたいことです。

 

 そうやって動詞をやっていき、最終回では後ろに載っている選文の一つ目を読んだのですが、この動詞は 3 人称単数で……みたいな普通の変化があまりなくて、動詞から作られる自身は不変化の動詞的形容詞や形容詞形の変化をする分詞などが多用されているのが印象に残りました。今回読んだ文が特別にそのような特徴を有していただけかもしれませんが。

 

 冬学期は、動詞は流石に古典ギリシア語とかなり似ていると感じました。語幹形成母音が入る動詞と入らない動詞があって後者は通常二つの語幹を持つこと、過去を表わすときに加音をつけること、願望法(希求法)で i の音が入ることなどなど。そして授業難易度や課題の重さとしては古典ギリシア語の方がだいぶきついものでした。

 

 こうやっていちおう一年間サンスクリットを学んできたわけですが、特に後半はかなり飛ばしてきていて、詳しくは講読をやりながら学んでいくといいという姿勢だったので、来学期も続けて講読をやっていきたいとおもいました。