読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

CommonNoun’s diary

予習をする。原典にあたる。

Urysohn の距離化定理とその周辺 その 1

数学

 この記事は春のつどいと先日のクリスマスセミナーで話した内容を書き起したものの前半です。定理を証明します。後半では(反)例を挙げます。Urysohn はふつうドイツ式で「ウリゾーン」と読まれるようですが私はロシア式で「ウリソーン」と読んでいます。この記事は主に寺澤順『トポロジーへの招待』を参考に書かれました。


    ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 距離化定理について述べるにあたって,「距離空間」と「距離化可能空間」は異なるということに注意しておく.距離化可能空間には確かにその位相を定める距離が存在するが,それがどんなものとは指定されていないからである.

 位相空間が距離化可能,すなわちそれに同相な距離空間が存在するような空間だからと言って,その上の実数値連続関数が一様連続かどうか,点列が Cauchy 列かどうか,部分集合が有界かどうかなどが決まるわけではない. 

 距離空間 { \displaystyle (X,d) } において, { \displaystyle x,y \in X } について { \displaystyle \bar{d} (x,y)= \max \{ 1,d(x,y) \} } とすると { \displaystyle \bar{d} } は距離の公理を満たし { \displaystyle (X,d) \approx (X, \bar{d} ) } である.そして { \displaystyle (X, \bar{d} ) } は常に有界である.

 the metric が存在するのが距離空間,a metric が存在するのが距離化可能空間といえる.

 ではなぜ距離化問題を考えるのか.

 距離化可能空間は位相空間としていい性質を持っている.例えば第 1 可算である.関数 { \displaystyle x \mapsto d(x,A) } は連続で,その零点の集合は { \displaystyle \mathrm{Cl} A } である.よってすべての閉集合はなんらかの実数値連続関数の零点の集合となる(このような空間は完全正規であるという).この関数は距離の取り方に依存するが,ピッタリその上で値 0 をとる関数の存在は距離の取り方に依存しないことに注意せよ.さらにパラコンパクトと呼ばれる性質も持っている.名前くらいは聞いたことがあるだろう.

 距離化可能空間はその各々がいい性質を持つばかりでなく,いいクラスをなしもする.部分空間や可算積で保存されるという性質を持つのだ.実際 { \displaystyle (X_i, d_i) , (i \in \mathbb{N}) } を可算無限個の距離空間とすると { \displaystyle \prod_{i=1}^\infty X_i } の 2 点 { \displaystyle x=(x_i)_{ i \in \mathbb{N} }, y=(y_i)_{ i \in \mathbb{N} } } について { \displaystyle d(x,y)=\sum_{i=1}^\infty 2^{-i} \bar{d_i} (x_i, y_i) } とすればこの距離は積位相を定める.

 いいクラスには特徴づけか十分条件がほしいものである.定義の「同相な距離空間の存在」というのはより大きな情報を持つ構造を必要としていて,使いやすい条件とは言えない.Urysohn の定理は空間の中の情報だけから(その上の被覆列の存在とかを要さず)距離化可能性を導いているのですごい.以下,空間は { \displaystyle T_1 } とする.

例.
 { \displaystyle X= \mathbb{Z} } において { \displaystyle \mathcal{O}= \{ \{ a+nb \mid n \in \mathbb{Z} \} \mid a,b \in \mathbb{Z}, b \neq 0 \} } を開基として指定する.これが開基をなすことは手頃な演習問題である.{ \displaystyle \mathcal{O} }可算集合で,開かつ閉集合からなる.

定義.
 開かつ閉集合からなる開基をもつ空間を 0 次元であるという.

 { \displaystyle n } 次元というのも定義できるが,ここではしない.

 { \displaystyle f_n \colon X \to 2=\{ 0,1 \} }{ \displaystyle f_n(x)= \begin{cases} 1 & x \in U_n \\ 0 & x \notin U_n \end{cases} } で定める.{ \displaystyle f \colon X \to 2^\mathbb{N} }{ \displaystyle f(x)=(f_n(x))_{n \in \mathbb{N} } } で定める.これは連続である.像を { \displaystyle Y } とする.

  { \displaystyle f^{-1} \colon Y \to X } による { \displaystyle U_n } の逆像は { \displaystyle f(U_n)=Y \cap \{ x \in 2^\mathbb{N} \mid x_n=1 \} } で,これは開である. { \displaystyle X \approx Y \subset 2^\mathbb{N} } なので距離化可能となる.

 { \displaystyle X } は孤立点をもたないが,ここで実は次の定理が成り立つ.証明はしない.

定理(Sierpiński).
 可算無限個の点からなる孤立点をもたない距離化可能空間は { \displaystyle \mathbb{Q} } に同相である. //

定理.
  { \displaystyle \mathcal{U} } を第 2 可算空間の開基とすると { \displaystyle \lvert \mathcal{U}' \rvert \le \aleph _0 } となるような開基 { \displaystyle \mathcal{U}' \subset \mathcal{U} } が存在する.

証明
 { \displaystyle \mathcal{B} } を可算開基とする. { \displaystyle B_1,B_2 \in \mathcal {B} } に対して { \displaystyle B_1 \subset U \subset B_2 } となるような { \displaystyle U \in \mathcal{U} } が存在する場合その 1 つを { \displaystyle f(B_1,B_2) } とすると { \displaystyle f }{ \displaystyle \mathcal{B} \times \mathcal{B} } の部分集合から { \displaystyle \mathcal{U} } への写像となり,その像は可算開基をなす.(発表の際証明が立ちゆかないように思えたがよく考えたら問題なかった.やってみてね) //

 
 0 次元第 2 可算空間は { \displaystyle 2^\mathbb{N} } に埋め込むことができる.  //

 なお { \displaystyle 2^\mathbb{N} } は 0 次元第 2 可算である.このような空間は 0 次元第 2 可算空間の万有空間であるという.

 今 0 次元空間を { \displaystyle 2^\mathbb{N} } に埋め込んだように空間を { \displaystyle I^\mathbb{N} } に埋め込むことで距離化を考えたい.上の議論で開かつ閉集合,すなわちゼロイチ 2 点集合への連続写像による { \displaystyle \{ 1 \} } の逆像が開基をなしていたように,単位閉区間への連続写像による { \displaystyle (0,1 ] } の逆像が開基をなせばよさそうである.

定義. 位相空間 { \displaystyle X } が完全正則であるとはすべての点 { \displaystyle x \in X } とすべての開集合 { \displaystyle U \ni x } について連続関数 { \displaystyle f \colon X \to [ 0,1 ] } が存在して { \displaystyle f(x)=1, f(X \setminus U)=\{ 0 \} } となることとする.

定理. 
 完全正則第 2 可算空間は { \displaystyle I^\mathbb{N} } に埋め込むことができる.ただし { \displaystyle I } は単位閉区間を表わす. 

証明. 
 { \displaystyle C(X,I) } の元 { \displaystyle f } に対して { \displaystyle U_f=f^{-1}( (0,1 ] ) } とする.これは開である.{ \displaystyle U } を開集合,{ \displaystyle x } をその点とすると { \displaystyle f(x)=1, f(X \setminus U)=\{ 0 \} } なる関数 { \displaystyle f } が存在する.このとき { \displaystyle x \in U_f \subset U } となる.よって { \displaystyle \{ U_f \mid f \in C(X,I) \} } は開基をなす.その可算部分開基を { \displaystyle \{ U_{f_i} \} } とする. 

 { \displaystyle f(x)=(f_i(x))_{i \in \mathbb{N} } } とする.{ \displaystyle x,y \in X,x \neq y } とする.{ \displaystyle x \in U, y \notin U } となるような開集合 { \displaystyle U } がある.{ \displaystyle x \in U_{f_i} \subset U } なる { \displaystyle i } がある.{ \displaystyle f_i(x)>0, f_i(y)=0 } より { \displaystyle f(x) \neq f(y) } で,よって { \displaystyle f }単射となる.

 { \displaystyle f } の像を { \displaystyle Y } とすると { \displaystyle x \in U_{f_i}  \quad \Leftrightarrow  \quad f_i(x)>0 \quad  \Leftrightarrow \quad  f(x) \in Y \cap \{ (y_n) \in I^\mathbb{N} \mid y_i>0 \} } より { \displaystyle X \approx Y \subset I^\mathbb{N} } となる. //

 次にこの「完全正則」の部分を「正則」に弱め(正則は自明に完全正則より弱い条件である)たい.その前に正規が完全正則を含意することを見る.次の定理は Urysohn の補題と呼ばれる大定理の帰結として述べられるのがふつうであるが,先にこちらを証明して Urysohn の補題を系として導くこともできる.春のつどいでは証明を行ったがついて来れた人は少なかったようである.図がないとわかりづらいので後日述べることにしたい.

定理. 
 { \displaystyle A } を正規空間 { \displaystyle X } の閉部分集合とする.{ \displaystyle f \in C(A,I) } とすると { \displaystyle F \in C(X,I) } が存在して { \displaystyle F \mid _A =f } となる. //

系. 
 正規空間は完全正則である. //

 実際,一点で 1 開近傍の外で 0 として定義した閉部分集合上の関数は連続で,よって全体へ拡張する.

 次に,第 2 可算ならば満たされるある条件のもとで正則と正規が一致することを見る.

定義. 
 空間 { \displaystyle X } が Lindelöf であるとは,{ \displaystyle X } のすべての開被覆が可算部分被覆をもつことである. 
 第 2 可算空間は Lindelöf である.また可算個の点からなる(より一般に,{ \displaystyle \sigma }コンパクトな)空間も Lindelöf である. 

定理. 
 正則 Lindelöf 空間は正規である.

証明. 
 { \displaystyle A,B \subset X } を閉とする.正則性と Lindelöf 性より { \displaystyle \bigcup U_i \supset A, \bigcup V_i \supset B }, { \displaystyle \mathrm{Cl} U_i \cap B=A \cap \mathrm{Cl} V_i=\varnothing } となるような開集合 { \displaystyle U_i, V_i (i \in \mathbb{N}) } が存在する.{ \displaystyle \bigcup_i (U_i \setminus \bigcup_{k \le i} \mathrm{Cl} V_k ) }{ \displaystyle \bigcup_i (V_i \setminus \bigcup_{k \le i} \mathrm{Cl} U_k ) } はそれぞれ { \displaystyle A, B } を含む交わらない開集合である. //

 以上より次の定理が示された.

定理. 
 正則第 2 可算空間は { \displaystyle I^\mathbb{N} } に埋め込むことができる.特に,距離化可能である. //

    ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 後半では、色々な例を通して正則空間にはやばいものが多くあることや正規空間のクラスはあまりいい性質をもたないことを見ます。そうすることでこの定義が人工的に見える完全正則空間というものがいいやつであることがわかってくるというわけです。