CommonNoun’s diary

予習をする。原典にあたる。

Baire の範疇定理、そしてその(おそらく)最初の応用

 2 年ちょい前くらいに、友人から「Dirichlet 関数(有理数全体の集合の特性関数)は連続関数の列の各点収束極限として書けるか?」と聞かれたことがありました。そのときはできるっぽいという結論が出たのですが、実はできません。「単位閉区間上の連続関数の列の各点収束極限は連続点をもつ」という事実の故にです。その事実は私が大好きな定理を使って証明できるのでご紹介します。原論文は読んでいないのでタイトルに書いてあることは憶測です. 


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2016 年の記録

 ・児玉-永見『位相空間論』

8/29

・児玉永見 [0,1] のコンパクト性の証明で一番大事なところを容易で済ませていてウケる 
・児玉永見は Urysohn の補題のことを補題とは呼ばなくて、そうだよな大定理だもんなという感じだった 

8/30 

・児玉永見 2 章からかなり未知の事実が提示されていく 
・1,2 章は 8 割方既知だと思っていた 

8/31 

・児玉永見パラコンパクト空間の章に入る 
・児玉永見第 2 章「積空間」を読んだ。ほとんど既知の内容だろうと思いきや後半は正則可分空間の位相濃度の評価や距離空間の開連続像の決定など知らないことも扱っていて面白かった。Michael の直線の構成も実はここで初めて追った。この章は特につっかえることなく読めたがここからはどうか 
・ここからはどうか っていうかまあもう第 3 章に入っているし すでに 2 箇所ぐらいで行間に悩みもしたんだけど 

9/1 

・2 元コゼロ被覆は正規、有限コゼロ被覆は正規、局所有限コゼロ被覆は正規の進化系統すき 
・児玉永見、可算コンパクトより先に可算パラコンパクトが定義される。 

9/2 

・正規空間はその単位閉区間との積が正規ならば可算パラコンパクトになるという定理の証明、図を書きたくなる 

9/3 

・児玉永見 Stone の定理の証明で「{ \displaystyle 2^{-n} } だけ膨らませている」ことぐらい書いてくれても良かったのでは 

9/4 

・今日も元気に児玉永見 
・前に「距離空間の開連続像はしかるべき分離性を課せば距離化可能となるか」と聞かれて、ならなさそうと思いながら例を出せなかったのだが、距離空間の開連続像になりうる空間のクラスは第 1 可算空間のクラスと一致するんだなあ 
写像のコンパクト性、行き先の族正規性ぐらい課せば距離化可能になる 
・児玉永見コンパクト空間の章に入る 
・コンパクト空間における位相濃度とネットワーク濃度の一致、証明を追っている途中は訳が分からないけど最後まで読むと意味が分かって楽しい 
・一般位相幾何学だいたい力技な気がしてきた 
・児玉永見第 3 章「パラコンパクト空間」を読んだ。難しくなると聞いていたが、確かに行間は増えたものの、この話題の論文を読んでいたためか、それほど難しいとは感じなかった。でも被覆の { \displaystyle \Delta } 細分を n 回とって星をとるのが { \displaystyle 2^{-n} } 膨らませることに対応していることは書いてもいいのでは 
・児玉永見の第 3 章は意欲ある人がそれまでの章と Stone の論文読んで挑めば普通に読めると思う 

9/5 

・児玉永見 p.107 の 4 行目 3 つの集合の交叉が空であるというのは空でないというのの間違いかな 
・またゼロ集合周りで分からないことがあったと思ったら 1/2 以下の逆像とるだけで解決した 
・可分空間の任意積は ccc にゃん 
・これ証明に { \displaystyle \Delta } システム補題が使われて、強制法とやらで出てくるやつか、と思ったんだけど、強制法でまさにこの結果の一部の二点集合の積の ccc 性を使うのだという話を見た 
・フィルターによるコンパクト化の議論も二度目になると飽きてくるな 

9/7 


・児玉永見の系 21.12 どうやるのかわからない 
・これかなーって写像はあるが連結性はどこで生きてくるんだ 
・そういえば児玉永見って図がないな 
・Novak 空間の構成はじめて追ったけどすごい力技だな 
距離空間 { \displaystyle C^{*}(\beta Y) } とかいう文字列、ギョッとする 

9/9 

・コーヒーを飲んで児玉永見を読む日と一日中寝る日を交互に繰り返している 
・児玉永見第 4 章「コンパクト空間」を読んだ。第 3 章より簡単と言う人がいたが普通に第 3 章より難しいと感じた。特に後半は動機付けも分からず辛かった。あとコンパクトという有限性を課しているからと調子にのって非可算添字集合とか可算部分集合全体とかを考え出すのやめてくれって感じだ 
・児玉永見に double sequence theorem が載っていないの、double sequence は秩序っぽい定理で児玉永見は混沌寄りを目指したからではないかという気がしてきた 
・児玉永見に載っているゲージ補題、「距離化可能空間の開被覆に対し半径 1 の球がそれを細分するような距離が存在する」を含んでいるな 
・つどいまでに第 5 章はやっつけられそう 
・児玉永見 §27 険しい 
・一様被覆系難しい 
・児玉永見、どれだけ準備しても読むのに苦労するのでいずれ読むつもりであるならば「あれとこれとそれを読んでから児玉永見に入ろう」とか考えるよりさっさと読み始めた方がいい 
・「直ちに得られる」得るのに 1 時間以上かかった 
・ヒントがあって助かった 

9/10 

・まるでわからない児玉永見 §27 だが 27.15 の証明の最後のパートだけは非常に自然なものに感じられる 
・この (2) の Y パラコンパクトに弱められるな 

9/11 

・児玉永見補題 28.9 証明中「ある開近傍 U が任意の W_n に含まれないとせよ」仮定する包含が逆では 
・その後の推論は合っている 
・局所コンパクト完全正規ならば第 1 可算、ちょっとすごい 
・それで局所コンパクトな CW 複体が距離化可能になるのか~(第 1 可算性が距離化可能を導く証明追ったことないけど) 

9/12 

・コンパクト化の剰余が  コンパクト⇒局所コンパクト { \displaystyle \sigma } コンパクト⇒ Cech 完備  リンデレーフ⇒可算型 

9/14 

・児玉永見第 5 章「一様空間」を読んだ。§27 がとにかくつらかった。読む前は、この章折り返しということで後半にこれまで書ききれなかったことをまとめてやがるな、と思っていたが、読んでみるとなんか一貫性があるということがわかった。そりゃ一様空間扱うなら近接空間とコンパクト化は扱うわ 
・ただ可算型はなんでここで出てきたんだよ そこは p 空間だろう 
・まあ 7 章で使うからなんだろうけど 
距離空間にもそれぞれ標準的なコンパクト化というのがあるのか…… 
・休み中に 7 章まで読みたいな 
・児玉永見、何がどう書いてあるかも当然大事だが、何が書いていないかにも注目してみると良さそう 
・児玉永見、記述が分かりづらいということは少ないなと思っていたが、第 6 章の頭は信じられないほど記述が分かりづらい 
・児玉は図を描け 
・あと二冊目のノートを使いきった 

9/19 

・被覆の延長ってやつも動機がわかりそうでわかんねえな 

9/20 

・児玉永見、被覆の延長の節で最初に Bing の example G をぶち込んできたのはなんだったんだ 
・完全正規、とくに継承的正規が族正規を含意しないぞ、って言いたかったのかな 
・ちゃんと定理 34.4 の証明中で生きていた 

9/21 

・児玉永見読まねば 

9/22 

・児玉永見 7 章まで読んだら位相と論理再開するか 
・児玉永見第 6 章「複体と拡張手」を読んだ。児玉は図を描けよ。幾何学者だろ。語呂の良さで有名な絶対近傍レトラクトだがまるで直観が働かない。Q は正規と距離化可能だけを考えればいーじゃん! って感じだ。だが肯定的な結果を示すのに Bing の例 G が用いられるのは面白いと思った。 
・児玉永見幾何編、魔導書読んでから取りかかった方が良かったかな 
・でも逆もあるかもしれない 

9/23 

・さっさと児玉永見第 7 章を読まないと何も読めない 
・この雑な読み方で幾何編を読んで何かを得ようとするのはちょっと今の私には早かった気もするが 

9/25 

・児玉永見 39.4 の証明かっこいいな…… 
・射影系の添え字集合を有限部分集合全体の集まりで置き換えるのがまずいいし、それで帰納的に可換図式を編んでいくのも素敵で、でも最後に普遍性ではどうにもならないところが出てきて集合演算やるのも渋い 
位相空間のエピ射は全射とは限らないからね
・でも最後のは 6.E によりって言っても良かったね 

9/26 

・児玉永見第 7 章「逆極限と展開定理」を読んだ。最初の節こそ前章の続きの色が濃く難しかったが、主題の逆極限のくだりは楽しく読めた。特に Mardesic-Pasynkov の定理の証明はかっこよかった。ただ最後の節は他に入れるところがないからここに置きましたみたいな感じがしたかな 
・さて、これで冬休みぐらいまで児玉永見はお休みとして、学期中位相空間論に関してはまた時間を見つけて距離化定理や一般化距離空間の論文を読んでいくことにしよう 

11/7 

・今日は久しぶりに児玉永見を読み進めるぞ 

11/12 

・第 8 章「Arhangel’skii の空間」§43 は意味不明だったが他はそんなに難解ではないな 
・児玉永見第 8 章「Arhengel'skii の空間」を読んだ。パラコンパクトを課さない p 空間の気持ち分からず。サブパラコンパクト周りも分からない。被覆を弄るやつはやっぱり苦手! 距離化に関する話題は楽しく読めた。細分射で射影系を作ってケーニッヒの補題を使う論法がかっこいい 

11/17 

・第 1 可算コンパクト Hausdorff ならば連続濃度以下の証明、面白い 
・自由列使う方も追ってみたい 
・児玉永見 3 冊目か 4 冊目かのノートを使い切った

11/18 

・児玉永見第 9 章「商空間と写像空間」を読んだ。この章のハイライトは何と言っても Alexandroff の問題の解だろう。この箇所を読んで煩雑なのでモデル理論的な証明の良さがわかったと言った人がいたがこれはそんなにわかりづらい証明だとは思わない。モデル理論的な方も追ってみたいが 
・距離化可能性が完全像に遺伝することの児玉永見の証明、分からない 

11/20 

・児玉永見 54.16 整列可能定理と超限帰納法を使った方が見通しが良さそう 

11/21 

・児玉永見最終章半分くらいまで行った 
・最終章気合いが入っていて他の章の 1.5 倍くらいの分量がある 

11/24 

・児玉永見に単位閉区間閉集合の集合に Hausdorff metric を入れたものは { \displaystyle l^2 } に同相とか(証明なしに)書いてあって、え今講義でそれコンパクトってと思ったが原論文見たら普通に児玉永見が間違っていて { \displaystyle l^2 } でなく単位閉区間の可算直積とだった(にしてもすごい結果だ) 
・児玉永見第 10 章「可算乗法的空間族」を読んだ。ページ数は多いしいきなり森田花井 Stone の意味不明な証明で始まるしでビビったが、読んでみれば面白かった。中でも特に { \displaystyle \aleph_0 } 空間と Morita 空間は気に入った。これであとがきで紹介された永見先生の論文を読めるかな 
・そういうわけで児玉永見一周してしまった 


・論文

2/6 

・1937 Frink, Distance Functions and the Metrization Problem を読んだ。非対称距離のくだりは多少ダルかったけど、前半の距離を手作りする感じがよかった。また最後の定理が後に長田の二重列定理を導くことになると思うと感慨深かった。 

2/7 

・1948 Stone, Paracompactness and product spaces を読んだ。寺澤本に難解と書いてあったからなかなか読み出せずにいたけれど、いざ読んでみると、そんなに難しくないじゃんという印象。簡易にされた証明を読んでいたからか。積の正規性の件も良い感じ 

2/9 

・1937 Cech, On Bicompact Spaces 第 III 章を読んだ。他の章は既知か興味の範囲外なので。2 つの Baire の範疇定理が実はどちらも 1 つの定理の特別な場合だというのが衝撃的だった。Cech 完備なる概念の初出というが記述は非常に分かりやすい。 

2/10 

・2005 Dasgupta, Countable Metric Spaces Without Isolated Points を読んだ。以前にも紹介した、有理数の位相的特徴付けについての論文。分かりやすい。定理の引用が多いのに落とした pdf には参考文献が載っていなくてつらい。 

2/11 

・1956 Morita-Hanai, Closed Mappings and Metric Spaces を読んだ。全てきちんと追ってはいない(それは難しそう)。知りたかったのは主定理の必要性だが、他の部分も面白かった。コンパクト距離化可能は連続像で保たれるから神であることだなあ 

2/14 

・1973 Jones, Hereditarily separable non-completely regular spaces を読んだ。初めて Hewitt's condensed corkscrew がどんなのか分かった気がする。あと Tychonoff はやっぱりすごい。 

2/16 

・1953 Michael, A note on paracompact spaces を読んだ。任意の開被覆{ \displaystyle \sigma } 局所有限開細分の存在によるパラコンパクトの特徴付けを利用して色々な命題を示していく。この辺の議論はちょっと苦手なのだと再認識。なので議論を何度か繰り返し攫っておきたい。 

2/27 

・1956 Michael, Another note on paracompact spaces を読んだ。だいぶ時間がかかってしまった。閉包保存被覆を用いてパラコンパクト性を特徴付け、連続閉像で保たれることを示す論文。しかし閉包保存な集合族というのは、あまりイメージが掴めない。 

5/24 

・1974 Hodel, Some results in metrization theory, 1950-1972 を読んだ。こういうサーベイ論文は片手間に読めていい。アルハンゲリスキの空間みたいなののルーツの一端はこの辺りにあるっぽい。しかしまた読むべき論文が増えてしまった…… 

5/25 

・1985 Nagata, A survey of metrization theory を読んだ。主に 70 年代の距離化理論がまとめられているもの。面白かったのは面白かったのだけれどちょっと読むのに早すぎたかなという感じ。60 年代の発展を追ってからもう一度読めばためになりそう 

6/22 

・1951 Bing, Metrization of Topological Spaces を読んだ。今更感はある。すごい定理とすごい例が次々に出てきてすごい。これで距離化定理 bot 誕生の日はかなり近づいた。例 B すき。サブパラコンパクトという概念はここから出てきたのだろうか 
・1960 Alexandroff, Some results in the theory of topological spaces, obtained within the last twenty-five years を読んだ。わからん話が多いが位相学ぶ上で文献を探すのとかに役立てたい

6/23 

・1961 Alexandroff, On some results concerning topological spaces and their continuous mappings を読んだ。児玉永見の内容と幾らか関わりがありそう。距離化理論についても面白そうな話題があった 

7/11 

・1958 Michael, Yet another note on paracompact spaces を読んだ。局所的にはとても分かりやすいが大域的には何をやっているのか分からない。double sequence theorem の証明が原論文よりだいぶ簡単になっていて感動。 

7/17 

・1955 Morita, A Condition for the metrizability of topological spaces and for n-dimensionality を読んだ。主定理から長田の破片定理があまりに簡単に出ていてすごい。次元のくだりはよくわからん 

7/29 

・1950 Nagata, On a necessary and sufficient condition of metrizability を読んだ。よくわからないうちに定理が証明されてすごい。っていうか主定理は Alexandroff-Urysohn に帰着させるのかって感じだ 

8/13 

・1966 Rolfsen, Alternative metrization proofs を読んだ。Stone-Arhangel’skii の定理をおそらく独自に証明したもの。Alexandroff-Urysohn の別証もあったが講演ではより古い Frink のを採用しようかな 

8/14

・1958 Jones, R. L. Moore’s axiom 1’ and metrization を読んだ。定理をひとつ示すだけのごく短い論文。仮定の (1) は不要に見える。とりあえず Hodel の論文の最後の節に載っている距離化定理はすべて証明を追ったことになるのかな。

10/1 

・1972 Hodel, Spaces defined by sequences of open covers which guarantee that certain sequences have cluster points を読んだ。似たような定義がたくさんあってよくわからん 

10/2 

・1970 Creede, Concerning semi-stratifiable spaces を読んだ。半層型空間について述べた博士論文。いまひとつ位置づけが分からずにいたこの空間のクラスが少し分かってきた気がする。あとやっぱりというか層型 p- 空間は距離化可能になるんだな 

10/3 

・1960 Stone, Sequences of coverings を読んだ。3 元被覆を作って Stone-Arhangel'skii の定理に帰着する手法が印象的だ。定理 2 の条件は似たものを考えたことがあったがこうなるのか、と思った。それから被覆補題の理解が少し深まった 

10/7 

・1971 Hodel, Moore spaces and w{ \displaystyle \Delta }-spaces を読んだ。やはり定義が今ひとつ頭に入ってこないが各点に近傍の列を与える g- 関数のことは少し分かってきたような気がする。可算コンパクト空間の距離化について述べたこの論文中の定理はこれが初出なのだろうか 

10/27 

・1927 Niemytzki, On the "third axiom of metric space" を読んだ。距離空間の歴史を感じる……確かに距離空間の公理の中では三角不等式ってそんなに自然でもないよな。こういったよくわからない極限で距離を構成するのも、また趣があると思った 

11/8 

・1992 山田, 自由位相群単位元の近傍系について を読んだ。自由位相群、やばい。読み始めはこんなものが人類の手に負えるのかと思ったが、何かしらの可算性があるのでかろうじて扱えるようだ。それでも開集合を決定するのも大仕事で大変だ。あとこの論文言葉の使い方が少しおかしい気がするぞ 

12/5 

・1962 Heath, Arc-wise connectedness in semi-metric spaces を読んだ。定理 3.6 が目的であったが連結性周りの話題も面白そう。だがこの論文には重要な定理の証明は載っていなくて Moore か同タイトルの博論に丸投げされている 

12/8 

・1972 Schori-West, { \displaystyle 2^I } is homeomorphic to the Hilbert cube を読んだ。さらに文献に当たらないとどんな同相が作られたのかわからないが、逆極限や near-homeomorphism といった手法は無限次元ならではのものなのかな 

12/27 

・1950 Nagata, On the uniform topology of bicompactifications を読んだ。苦手とする、そして長田先生が得意としていた被覆を弄るやつ。有界連続関数がすべて一様連続となるための必要十分条件などが述べられた。系 5 もまた興味深い 


・その他 

231 回致して 30 食ぐらいインドカレーを食べた

『幻想再帰のアリュージョニスト』を読め

 一番言いたいことを先に言うと、web 小説『幻想再帰のアリュージョニスト』(以下『アリュージョニスト』)を読もうという話です。

 

 こちら私が最初に読んだなろう小説になります。異世界転生モノです。あまり有名ではないが Twitterはてなブログにコアなファンがいるみたいです。何かしきたりとかあったら面倒なのでリンクは貼りませんけど何件か紹介記事がすでにあるので検索して読んでみてはどうでしょう。この記事より参考になると思います。 

 

 ここ 3 ヶ月くらい学業に追われたり Twitter 小説のログを読んでいたり*1して更新を追えていなかったので、年内に最新話まで追いつこうとして今朝(12 月 30 日朝)最新 5 話ぐらいを読みました。それで『アリュージョニスト』の良さを再認識したのでこうして記事を書こうと思い立った訳です。最新話あたりの話はしません。

 

 それ以外で宣伝とかしていないしはてなでの交流などもないので当たり前ですけど、このブログへは Twitter 経由のアクセスがほとんどなんですね。つまりこのブログへのアクセス者はだいたい Twitter アクティヴフォロワーと言えます。となると数学徒や言葉遊び手が多いのでは? と思うわけです。言葉遊びの人はもうそんなにいないかな。

 

 これは偏見ですけど数学の人や言葉の人はこの小説を気に入りそうだと私は思っています。人を選ぶ小説ですが貴方はたぶん選ばれます。

 

 そうでないって方もまあとりあえず「3-7 言理の妖精語りて曰く」まで読んでみてください。長い! という方のためにいきなりでも読めるやつを挙げておくと「死人の森の/断章取義のアリュージョニスト」とか「『チョコレートリリーのスイーツ事件簿Season2 Case14. アズチョコに挑め!』」とかでしょうか。あとスピンオフの『アリス・イン・カレイドスピア』もいいかも。

 

 以下作者のあらすじに含まれない情報が出てくるし、その中にはなるべく避けたつもりですがわりと核心的なものもあると思うので、まっさらな状態で読みたいという人は下のリンクから読みに行ってください。

ncode.syosetu.com

*1:どちらについても後日記事を書く可能性あり

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Urysohn の距離化定理とその周辺 その 2

 反例パートです。ご存知でしょうが反例とは何らかの(成り立ちそうな)主張に対し、その例の存在により主張が成り立たないことが示される例のことです。つまりヘンな位相空間/群/環/etc. とかヘンな写像とかそういうものです。

 又聞きですが 20 世紀最大の数学者 Grothendieck は言ったそうです。位相空間は病的なものがあるから空間概念としてダメだと。しかし一方でその事実は、位相空間を、空間概念を定式化するための道具にとどまらず、それ自身魅力的な研究対象とするものでした。

 例えば以下で見るように正規空間の積は(実は完全正規パラコンパクトのような強い仮定のもとであってさえ)正規とは限りません。これは、積空間の正規性は因子空間に強い影響を及ぼすということに他ならないでしょう。その話題は多くの人を惹き付けて、それについて興味深い結果がいくつも生まれたようです。

 

 病的な空間が存在するほどに、位相空間論は魅力を増すと私は考えています。以下いくつか反例たちを見ていきます。参考文献は Steen-Seebach "Counterexamples in Topology"

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Urysohn の距離化定理とその周辺 その 1

 この記事は春のつどいと先日のクリスマスセミナーで話した内容を書き起したものの前半です。定理を証明します。後半では(反)例を挙げます。Urysohn はふつうドイツ式で「ウリゾーン」と読まれるようですが私はロシア式で「ウリソーン」と読んでいます。この記事は主に寺澤順『トポロジーへの招待』を参考に書かれました。

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2016 年クリスマスセミナー

2016 年 12 月 24-25 日にクリスマスセミナーを行ったのでそれについて記録します。

 発端は 11 月 17 日にクリスマスにセミナーをやりたいという旨発言したら(ツイート削除済み)アルゴドゥー(alg_d)氏が乗ってきたことでした。同月 24 日にツイプラを立てたときは少ししか集まらず、これは開催できないかもなとも思いましたが主にワヘイヘイ(waheyhey)氏の宣伝のおかげで十分な人数が確保できました。

 ただ残念なこともあって、本来はミュッパー(kingjou12345)君にも 1 日目の午前に参加してもらうはずだったところ不手際で部屋がとれず参加していただけなくなるなどもしました。

 そういうわけで迎えた 1 日目は、先述のアルゴドゥー氏とワヘイヘイ氏は来られず、参加者は私と意識(concious77)君、すうさん(k_scheme)、y.(waidotto)氏とあと知らない人の 5 人でした。スピーカー予定の 4 人のうち半分が来れなかった上に、来ていたすうさんも発表の準備はできていないということで、私が話すことになりました。

 内容は春の関西すうがく徒のつどいで話したものほぼそのままのもので、いずれブログに書きます。年内に上がることは期待しないでください。それで 2 時間くらいダラダラ話したところで意識君が話せることがあると言うのでそれを聞きました。これは { \displaystyle \omega _1 } はノンコンパクトだが可算コンパクトという話で、非有界閉集合の性質を用いた証明が与えられました。

 かくして 1 日目を終え、帰って寝て三者三葉の一挙放送を見るなどしました。


 そして 2 日目ですが、すうさんの手引きで数理棟に入ることができたのでそこでやることにしました。参加者は私とすうさん、アルゴドゥー氏、ワヘイヘイ氏(遅刻)、意識君、y. 氏の 6 人でした。知らない人はなんか来る気分が作れなかったそうです。

 

 正門前に集まっているとモース関数さんやリングさんが通りがかって挨拶を交わしたりしました。あちらもクリスマスにセミナーをやっているようです。ロマ数とやらも昨日開催されていたし都数でも何かやるとか聞いたし、至るところでクリスマスセミナーが開かれるなあと感じました。

 まずはアルゴドゥー氏から普遍随伴の話です。すべての概念が Kan 拡張であることを説かれ、すべての概念は Kan 拡張なんだなあと思いました。久しぶりに圏論をやってみる機運が高まります。

 次にその発表の途中でやってきたワヘイヘイ氏から最先端の代数幾何の話がありました。本当に最先端なので内容を呟いたりするのは避けられよとのことだったので、避けておきます。さらにワヘイヘイ氏から三角圏の次元の話があって、これには三角圏知らないながら興味を惹かれました。疲れたようなのですうさんの話をはさんでその後で続きをやってもらうことにしました。

 そしてすうさんから情報幾何の話ですが、そことそこ繋がるのか〜って感じでした。でも今はまだ私にはよくわかりませんね。幾何をやっていってから勉強すると感動できそう。

 さてワヘイヘイ氏の話の続き、と思いきや用事があるとのことで帰っていきました。風のようにやってきて風のように去っていく人でした。次元に関して、いくつかあるかのような口ぶりだったので後で調べてみたら dimension"s" of triangulated categories の記事が出てきて、複数あるのか〜〜って感じでしたね。

 これで発表予定の人の話は終わったわけですが、なんか続く感じになって意識君から meta-Lindelöf かつ可算コンパクトならばコンパクトになるという話がありました。meta-Lindelöf とはメタコンパクトの有限のところを可算に変えたやつです。可算コンパクト空間の点有限開被覆が有限部分被覆を持つことを利用して点可算開被覆が有限部分被覆を持つことを示すなかなか面白い証明でした。これと前日の結果をあわせると { \displaystyle \omega _1 } が meta-Lindelöf でないことがわかるというわけです。

 その次は y. 氏から計算論の結果についての発表です。彼は準備をまったくしていないとのことでしたが無準備で発表ができるのはこういうところだけだと唆して発表させました。内容は、文字列を縦に並べたドミノの有限集合から列をつくって上の文字列と下の文字列が一致するようにせよという問題を解くアルゴリズムは作れないというものです。証明が傑作で、ドミノを使ってチューリングマシンがシミュレートできることを示して例の有名な停止性問題に帰着するとのことでした。

 それですべての発表は終わり、渋谷のピザ屋に食事に行きました。楽しかったです。